口腔がんの治療法は主に病期に基づいて決定されます。手術療法と放射線療法が治療の中心で、
状況に応じて化学療法が併用されます。各病期に対する代表的な治療法は以下のごとくです。                         
■I期
手術療法または放射線療法が単独で行なわれます。
 
■II期

手術療法、放射線治療のどちらか、または両方が行なわれます。

場合により化学療法が追加されます。
 
■III期

手術療法が行なわれます。放射線治療や化学療法もよく併用されます。

 
■IVA~C期(手術で切除可能ながん)

手術療法が行なわれます。

放射線治療や化学療法もよく併用されます。
 
■IVA~C期(手術で切除できないがん)

放射線治療と化学療法が行なわれます。

場合によっては積極的な治療の代わりに緩和ケアを行なうこともあります。
 
各治療法について説明します。
 
■手術療法
口腔がんの手術には以下の3種類があります。
 
■原発巣手術
口の中のがんがある部分を原発巣といい、この部分を切除する手術です。安全域といってがんの
周囲の正常組織も含めて大きめに切除します。
 
■舌がんに対する原発巣手術の例
 
■下顎歯肉がんに対する原発巣手術の例
 
■頚部郭清術
首のリンパ節にがんが転移した場合、または転移が疑われる場合に行なわれる手術です。転移したリンパ節のみを摘出するのではなく、他のリンパ節およびリンパ節周囲の脂肪組織や神経・血管・筋肉などを同時に切除します。
 
■首のリンパ節の模式図
小さな黒丸がリンパ節で、首には数十個のりんぱ節があります。
日本頭頸部癌学会編.頭頸部癌取り扱い規約改定4版より
 
■再建手術
原発巣手術により欠損が生じた部分に体の他の部分の組織を移植して、欠損を補填する手術です。
腕・腹部・胸部などの皮膚や筋肉、腸骨(腰の骨)、腓骨(足の骨)などが用いられます。
 
■放射線療法
高エネルギーX線などの放射線を使用してがんを小さくしたり消失させたりする治療法です。
がんが小さい場合は放射線単独で治療が可能です。進行したがんに対しては、手術療法や化学療法と併用して用いられます。体の外部から照射(放射線を当てること)する外照射と、放射線が出る
特殊な針を直接がんに刺して照射する組織内照射があります。
 
■化学療法
抗がん剤による治療です。初期のがん(I期)に化学療法が行なわれることはあまりありません。
一般的には進行したがんに対して手術療法や放射線療法と併用して用いられます。多くは注射薬
で点滴により投与されますが、飲み薬もあります。
 
■各治療法の問題点
手術療法では、大きな手術は体の負担が大きく、食事や会話の障害や顔の変形などが生じること
があります。放射線療法では、口内炎、皮膚炎、白血球減少、吐気、だるさなどが生じ、一時的に治療を中断しなくてはならないことがあります。さらに、唾液が出なくなって口が渇いたり、まれです
が下顎骨骨髄炎といって下あごの骨が腐ってしまい治療が必要になることもあります。化学療法
では、白血球・血小板の減少、肝・腎障害、脱毛、口内炎、下痢、嘔吐などが生じます。放射療法と
化学療法を同時に行うとこれらの副作用は起こりやすくなります。
したがって、各治療法の欠点を十分考慮したうえで治療が進められます。
 
以上、口腔がんに対する代表的な治療法を説明しました。しかし、治療法は、患者さんの全身状態、
年齢、職業、希望などによっても変わってくるため、日本全国に共通した一定の治療法というもの
は決まっていないのが現状です。また、近年、放射線療法ではいくつかの新しい方法が開発され、化
学療法においても、がんの栄養動脈に直接抗がん剤を注入する動注法などが考案され高い効果が
得られるようになっています。そのため、前ページに記載した方法とは異なった治療法を選択して
いる病院もあります。
下に、現在、各病期に対して用いられる治療法を表にしました。
 
■病気と治療法

 

 

資料提供:財団法人 がん研究振興財団